秋田県潟上市で老舗つくだ煮店の4代目として、次世代のために奮闘する男性がいる。若い人が地元で活躍できるよう改革に乗り出した男性の思いを紹介する。
シラウオやワカサギなど、香ばしくて甘じょっぱい味わいのつくだ煮。八郎湖で取れた魚を使った地域の特産品だ。
つくだ煮を作っているのが、昭和22年創業、従業員約20人の老舗つくだ煮店「佐藤徳太郎商店」だ。
社長の佐藤進幸さんは高校を卒業後、仙台市で広告デザイナーとして活動した。
潟上市に戻り、家業を手伝うきっかけとなったのは、交通事故だった。大ケガをした佐藤さんは、献身的に看病してくれた両親の大切さを実感した。
佐藤徳太郎商店 佐藤進幸さん:
「仙台に帰ってもしばらく仕事ができないし、歩けないから。『実家に帰ってきて仕事を継ぐから』と言ったらリアクションはあまりなかったが、たぶん喜んでいたと思う。そう思っていてほしい」
思わぬ事故から、第2の人生のスタートを切った佐藤さんだが、またもや困難に直面した。2011年の東日本大震災で福島にある自社工場が津波の被害を受けた。会社を立て直すため、3代目の父・進さんと毎日話し合っていた矢先、進さんが病に倒れた。
佐藤徳太郎商店 佐藤進幸さん:
「亡くなる前の年は本当に本音でぶつかり合えて良かったなと思う。貴重な時間だった。最終的には昔ながらの技術を革新していき、全国に秋田のつくだ煮を広めるという方向性でやっていこうと」
佐藤さんは、父の思いを胸に、2013年に店の4代目を継ぎ、つくだ煮の味を守っていくため改革を進めている。
佐藤徳太郎商店 佐藤進幸さん:
「職人よる勘や人による部分は守っていかなければと思い、同じ製造でも例えば、砂糖やしょうゆの量を計るのは職人の勘じゃなくてもできるので機械を使ったり、守るべき部分とどの部分を改革して新しくしていくか。その見極めがすごく大事かなと思う」と話す。
つくだ煮の味の決め手となるのが、秘伝のタレだ。自家製しょうゆや水アメ、麦芽糖などで作るタレは、素材本来のうまみが引き立つよう、具材の種類によって味の濃さを調整している。
また、新商品の開発にも挑戦していて、定番からピリ辛味など変わり種まで、約30種類を展開している。なかでも、いち推しなのが、秋田の米に合うおかずを決める「ごはんの友選手権」でグランプリに輝いた「華しょうが」だ。
「つくだ煮を次の世代へ残したい」という佐藤さんの思いに賛同した、開発チームのアイデアから生まれた。
佐藤徳太郎商店 佐藤進幸さん:
「あまり口出ししないほうがいいなと思って。いつのまにかできていた。勝手に応募して開発チームから『なんか受賞したので社長、授賞式行ってください』と言われて。皆が何回もごはんに合うためにどういう味付けにしようかとくり返し作った成果じゃないかと思う」
「華しょうが」は、大潟村や横手市産のショウガなど県産食材にこだわり、ピリ辛でさわやかなショウガの風味とアミの甘じょっぱさで、ごはんが何杯でも進む。
店を継いで11年。佐藤さんは地域の人たちの協力なくしてはつくだ煮作りはできないと感じている。
佐藤徳太郎商店 佐藤進幸さん:
「つくだ煮というのは、ただ仕入れて売るだけではなくて、魚を獲ってくれる漁師やいろんな人を合わせて地域全体でできるものだと思うので」
地域とともに歩むつくだ煮作り。佐藤さんが目指す今後は…
佐藤徳太郎商店 佐藤進幸さん:
「若い人を地元に残していきたい。いま、この伝統やノウハウを次世代や未来につないでいくためには若い人の力が絶対に必要。100年、200年先でも、秋田のつくだ煮が全国に名前が広がっているのが野望、夢」
これからも佐藤さんは、地域をつくだ煮で盛り上げる。
佐藤徳太郎商店のつくだ煮は、道の駅しょうわ、佐藤徳太郎商店のオンラインショップで購入可能だ。
11月13日(水)18:30