クマによる人身被害が増え続ける中、万が一の時にどう命を守るのか。クマを追い払うグッズに注目します。
◆「クマスプレー」は“最終手段”◆
9月18日、秋田県鹿角市八幡平で、電柱の点検をしていた作業員2人がクマに襲われました。その際、その場にいた別の作業員がクマスプレーを使いました。県の分析では、このスプレーによって被害を最小限に抑えられた可能性があります。
いざという時のため、スプレーを携帯している人は多いと思いますが、選び方や正しい使い方を知っていますか。あきた森づくり活動サポートセンターで専門指導員を務める福井敬二さんに教えてもらいました。
福井さんは「クマスプレーは、クマにばったり遭ってこれ以上逃げ場がないとか、どうしようもないときは頼っても良いが、お互いにクマと人間が危害を与えない同士だと分かれば、クマも撤退するため、それを待つ。“最終手段”でスプレーを使うのが良い」とアドバイスします。
◆噴射のポイントは「距離」と「風向き」◆
実際にポールをクマに見立てて、使い方を教えてもらいました。
クマに遭遇してしまったら、まずは、後ずさりしながら落ち着いてクマ撃退スプレーを準備します。すぐに取り出せるように携帯するようにしましょう。
次に安全クリップを外し、クマの顔、特に目と鼻の間をめがけて噴射します。
噴射の際のポイント。一つ目は「クマとの距離」です。
今回使用したスプレーは、クマとの距離が約5~8メートルで使用可能です。5メートルではポールに届きましたが、10メートルでは届きませんでした。使用できる距離は製品によって異なるので、よく確認して選びましょう。
二つ目のポイントは「風向き」です。
スプレーの主な成分はトウガラシに含まれるカプサイシン。人に当たった場合、視界が奪われる恐れがあります。風下に立って使用しないように気を付けましょう。
また片方の膝を曲げて、安定した姿勢を取ることも重要です。
◆噴射できないときは“防御姿勢”をとる◆
それでもクマは、100メートルを6秒で駆け抜けるほど足が速いとされています。スプレーが間に合わない場合は即座に首を両手で覆い、うずくまる防御姿勢を取りましょう。風向きによって噴射できない場合も同様です。
現在はクマスプレーをホームセンターなどで購入できますが、環境省によると国内では明確な規制がありません。アメリカは環境保護局(EPA)が定める基準があります。選ぶ際は、EPA認可のスプレーが一つの目安となります。スプレーの下部に「EPA Registration #番号」と書かれたものを目印にしましょう。
ただし、クマスプレーはあくまでも最終手段。まずはクマに遭遇しないことが重要です。1人で行動しない、鈴などで音を鳴らしてクマに自分の存在を知らせるなど、できる限りの対策をしましょう。
10月01日(水)10:30