2014年から2024年までの秋田県内の漁獲量の推移を見てみると、2024年は4323トンで前の年より17%減少し、過去10年で最も少なくなりました。漁獲量の減少に加え、漁師の担い手不足や燃料費の高騰など、漁業を取り巻く環境は厳しさを増しています。その逆境に負けず奮闘する若手漁師がにかほ市にいます。動画配信や加工品の販売を通じて秋田の魚の魅力を発信しています。
にかほ市の象潟漁港を拠点とする漁師・佐々木一成さんです。
漁師一家の4代目として育ち、関東の大学の水産学部を卒業後、神奈川県の鮮魚店に就職。目利きや魚の流通などについて学んだあと、2013年ににかほ市に戻り、漁師になりました。
定置網や素潜りでの漁を行う傍ら、佐々木さんが取り組んでいるのが、動画投稿サイトYouTubeでの発信です。
5年ほど前から漁師のユーチューバー『漁チューバー』として活動。撮影から編集まで自ら行い、漁師の仕事や魚のさばき方・調理法などを動画で分かりやすく紹介しています。
佐々木一成さん:
「漁師をしていて、一般の人は見られない風景がたくさんあると思ったので、それを共有したら面白いかなというのと、魚を食べるところまでの流れはなかなか分からない状況だったと思うので、誰かの参考になればとやっている」
情報発信だけではなく、自分が取った魚を手軽に食べられる形で消費者へ届けようと佐々木さんが始めたのが、加工品の販売です。
2024年春に象潟漁港近くの空き家を改装し、加工場を整備しました。
菅原咲子アナウンサー:
「まだまだ真新しい加工場、色々な機械がありますが、どうやって加工していくんですか」
佐々木一成さん:
「アジの干物だと、さばいて塩水に漬けて、漬けた後に乾燥機に入れて乾燥していきます」
2024年9月には『潮香』というブランドを立ち上げ、アジの干物としめサバをオンラインショップや地元の道の駅で販売し始めました。
鮮度にもこだわり、取った魚をすぐに氷点下60度で急速冷凍し、新鮮な商品を消費者に届けています。
菅原咲子アナウンサー:
「商品の梱包まで1人でやっているんですね」
佐々木一成さん:
「やれるかなと思って挑戦したんですけど、思いの外、労力がかかるんだなと実感しています」
オンラインショップは、多い月で200件近い注文が入るほどの人気ぶりですが、佐々木さんは「この1、2年は漁師をしてきた中でも全然魚が取れていない」と、加工するための魚の水揚げがこれまでにないほど減っている現状に頭を悩ませています。
特に、例年秋から冬にかけて最盛期を迎えるサケの不漁が続いていて、『潮香』の主力商品として売り出すことを計画していた『サケとば』は、販売のめどが立っていません。
佐々木一成さん:
「2024年もサケが取れなくて厳しい状況だと漁師の仲間たちと話していたが、2025年の方が魚が取れない状況が10月は続いている。数字で見ても、過去5年は10月で20度以上の水温が続いている。サケは冷たい水を好んで来るので、そういうことも影響しているのではと思う」
漁獲量の減少傾向に終わりが見えず、厳しい状況が続きますが、佐々木さんは秋田の水産業に少しでも明るい未来をもたらすため挑戦を止めません。
佐々木一成さん:
「廃業するしかない状況が続き秋田県の水産業がなくなってしまうと、食文化の一つとして水産物は重要な位置だと思うので、顔を上げて前を向いて自分のできることをやっていくしかないと思っている」
漁業を続けるのが難しい現状に加え、消費者の“魚離れ”にも危機感を抱いている佐々木さん。自治体や企業などからの依頼で魚のさばき方教室の講師を務めるなど、消費者が魚に触れるきっかけづくりにも積極的に取り組んでいます。今後の活動にも注目です。				
					10月31日(金)19:30