さまざまなものの値段が上がり続ける中、秋田県湯沢市のクリーニング店が手がける子育てに欠かせないあるものを洗浄するサービスが、じわりじわりと広がっています。「一つのものを長く使う」。消費者の意識に変化が起きているようです。

湯沢市に本社を置き、県内で4店舗を展開するクリーニング店「仕上屋」です。2025年で創業78年。確かな技術が評判を呼び、県内各地から洗濯物が集まります。

ものの値段が上がり続ける中、高橋友広社長は「きれいに洗う、直す、使うというのが前よりもより強くなっている気がする」と消費者の意識に変化を感じています。

仕上屋は、その思いに自慢の技術で応えます。

例えば、自動車学校でバイク教習を担当する教官のブーツを修理するサービス。ブーツは靴底の減りが早く、毎年のように買い替える必要がありますが、仕上屋では新品の半分ほどの値段で修理できるため、東北や北海道、関東の自動車学校から注文が相次いでいます。

さらに、あるものの依頼が増えています。それがベビーカーとチャイルドシートの洗浄。「ベビーカーは洗えるのか？」と思うかもしれませんが、仕上屋の分解する技術があればきれいにできます。

サービスを始めたのは2024年。とある客から「もらったものの、汚れがひどくて使えない」と、カビだらけのベビーカーの洗浄を依頼されたのがきっかけでした。

洗浄する様子を見せてもらいました。まずは取り外せるパーツを外して20分ほどつけ置きします。使うのは秋田県立大学と共同で開発した特許技術を応用した洗剤です。数分つけただけでかなりの汚れが解け出てきました。

取り外せない部分にはスプレーで洗剤を吹きかけ、さらに高温のスチームを噴射する機械に入れて汚れを浮き出させます。

すすいで乾燥したら新品同様にきれいになりました。

ベビーカーは新品で購入すると少なくとも数万円。おさがりやリサイクルショップなどで買う人が多いものの、カビやシミが気になる場合も。評判が口コミで広がり、週に数台のペースで注文が入るようになりました。

高橋社長は「子どもが使うものなので、菌など目に見えないものが残らない状態で渡さなければならないので、細かいところまで気を遣う」と話します。

一方で、消費者と同様に店も物価の高騰に悩まされています。

高橋社長は「ドライクリーニングで水の代わりになるのが石油系の溶剤。これも倍近くに上がっている。動力を動かすのが灯油。灯油は一番安い時から比べると3倍以上」と頭を抱えます。

こうした課題にも役立つのが仕上屋の技術力。通常のクリーニングでは、汚れ落ちを良くするために50～60度のお湯で洗浄しますが、高温のため衣類にダメージが出てしまいます。

仕上屋は39度以下のぬるま湯でも汚れを落とす技術を確立。この技術で衣類の傷みや型崩れを防ぐだけでなく、燃料代や二酸化炭素の排出量を抑えることもできます。2024年は2022年と比べて燃料の消費量が15％減少しました。

終わりの見えない物価高騰。仕上屋は技術とアイデアで消費者を支えます。

仕上屋・高橋友広社長：
「クリーニング業界でできることは衣・食・住の『衣』の部分。今まで諦めていて新しいものを購入していたのが、もしかしたら直るかもしれないということをクリーニング業界ができたらいいと思う」

仕上屋では衣類に限らず、靴やかばんなどどんなものでも汚れを落とせる可能性があるということです。

「洗って繰り返し使う」。この意識が物価高への一つの対応策となりそうです。

04月22日(火)19:30