お酒が飲めなくても楽しめるノンアルコール飲料の種類が年々増える中、秋田の酒造り文化を生かした新しいドリンクを提案する男性がいます。秋田の技術を海外へ、そして未来へ。大仙市の酒店に生まれた男性の挑戦を紹介します。
見た目はほんのり黄金色の透き通ったドリンク。実は甘酒です。秋田産のコメとこうじと水だけで作られ、「KOJICLEAR(コージクリア)」と名付けられました。
KOJICLEARの製造は、大仙市の酒造会社で行われています。
たるに入っているのは一般的な白い甘酒ですが、フィルターに通して専用の機械で圧縮すると、ホースからはろ過されて透明になった甘酒が。
ほぼ手作業で作る透き通った甘酒を試飲させてもらいました。
立川愛梨アナウンサー:
「甘酒だと思って飲むと全く違う。最初にフルーティな酸味がふわっとくるが、後味はコクがあり、甘酒の概念が変わる」
KOJICLEARを開発したのは、株式会社エスの秋元衆平さんです。秋元さんは70年続く大仙市神宮寺の酒店に生まれ、幼い頃から酒造りに親しんできました。
そんな秋元さんが可能性を感じたのがノンアルコール飲料でした。
秋元衆平さん:
「ノンアルコールにした理由は、自分が酒が飲めなかったというのが一番大きい。飲めないは少し極端だが、酒を造るよりはノンアルコールで誰でも楽しめるものができればいいなと思った」
秋元さんの父で酒店店主の浩さんも、実は酒があまり得意ではないとか。
最近のアルコール離れは店の売り上げにも現れていて、造る側も売る側も、時代に対応していく必要があると、浩さんは息子の挑戦に期待を寄せています。
父・浩さん:
「KOJICREARが新しい可能性を示していけるのであればとても良いことだと思う。周囲の期待も大きいと思う。余り肩肘張らず、少し地に足をついた形で少しずつ頑張ってほしい」
秋元さんは大学卒業後、イギリス・ロンドンに留学。帰国後は、PR会社や宇宙開発のスタートアップ企業などで働き、経験を積んできました。
その中で見えてきたのは、ふるさと秋田の未来を守りたいという思い。
秋元さんは「自分が今まで見て、育ってきた秋田の環境。秋元酒店だったり、コメや農業だったり、それをしっかり自分の子どもや孫の世代に残していけるものをつくりたい」
秋田の酒造り文化を生かせるものを。そんな思いから、秋元さんは“飲む点滴”とも称される甘酒に目を付け、独学でこうじや発酵の研究を始めます。
最大の課題は、従来の甘酒が持つ甘さとドロッとした口当たりでした。
もともと酒の知識はあったという秋元さんですが、開発はかなり苦戦したとか。
秋元衆平さん:
「知っている知識でやってみても、思い通りにならないことがいっぱいあったので、そこを何度か繰り返した。自分が思った通りにつくるためには、どうしたらいいのか突き詰めないといけないと改めて感じた」
試作を重ねること約2年。ようやくKOJICREARが形になり、会社が始動するという矢先、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発令されます。
製造や商談が思うように進まず、歯がゆさを感じる時期が続きました。
それでも信じた道を諦めなかった秋元さん。いまでは日本だけでなく海外からも注目され、販売先を広げています。
今後はフレーバーを充実させ、大手飲料会社とのコラボ商品も企画しているそうです。
秋元さんが変わらずに信じ続けるのは、秋田の自然と人の手が育む技術の力です。
秋元衆平さん:
「こうじ菌は、カビ菌という微生物を使った新しい食品。秋田県にはそのこうじ菌をずっと突き詰めて来た人たちがいる。日本の中でもかなりトップレベルの技術を持っている。そこはぜひ秋田県民の皆さんに、自信を持って世界で戦える技術だと思ってもらいたい」
ふるさと秋田の誇れる文化を世界へ、そして未来へ。秋元さんの挑戦はこれからも続きます。
10月17日(金)19:30