30年にわたり秋田県五城目町の医療を支えてきた診療所。3年前の記録的大雨で浸水被害を受け、一度は復活したものの、その後人手不足となり5月末で閉院しました。地域医療の現状を取材しました。
五城目町の中心部・馬場目川沿いにある大窪胃腸科内科医院です。院長の大窪天三幸医師(78)が29年前に開業。以来、地域に根ざした診療所として多くの患者が訪れてきました。
消化器を専門とする大窪医師。年間の内視鏡検査の数は大腸が100件、胃が400件以上に上ります。
患者は「大窪院長は患者のことをよく見ていてくれて、気を使ってくれて、いろんな話をしてくれるので、気軽になんでも聞けてすごくありがたい」「腰の低い人でなんでもお話しできて、安心してゆっくり話ができる先生」と話します。
地域住民にとって身近な存在の診療所でしたが、5月30日に閉院しました。
大窪胃腸科内科医院・大窪天三幸院長:
「高齢の人は特に『死ぬまで診てもらいたい』と言う患者も多かった。非常に気の毒だが、申し訳ない」
閉院した理由の一つが「人手不足」です。
半年前に事務職員が退職し、求人を出していましたが応募はなく、その間、保険の請求などの事務作業は大窪院長と看護師が担当してきました。
請求にミスがあるとその分、減収につながります。
大窪天三幸院長:
「最近は少しずつ私と看護師で慣れない事務をやっているが、なかなか保険請求がスムーズにいかず、減収が続いている。採算が取れないまま、赤字のまま続けていくのは私も大変」
地方の人手不足は、地域医療にも影響を及ぼし始めています。
さらに拍車をかけたのが、2023年7月に県内を襲った大雨による被害です。
馬場目川が氾濫し、診療所は約70センチの高さまで浸水。レントゲンなどの医療機器や電子カルテのデータなどほぼ全てを失い、水害による損害は2000万円以上に上りました。
国は、被災した医療機関に復旧費用を補助する制度を設けていますが、対象は、救急救命センターやへき地の診療所などに限られます。
大窪院長は自らの蓄えを取り崩し、診療所の復旧にあたりました。
大窪天三幸院長:
「負債が2000万~3000万円の間で、この2~3年で回収しようと努力したが、従業員が集まらずうまくいかないこともあり、損害の回収はもう無理だと分かったので閉院を決心した」
周辺には湖東厚生病院がありますが、高齢の患者には待ち時間が負担となるため、待ち時間の少ないこの診療所に通っていた患者も少なくありません。
患者は「閉められるのは困っちゃう。これからどこの病院を選べばいいのかな、と思って悩んでいる」「いざという時には小さな病院のほうが遅くなってからでも駆け付けて診てくれるので助かるが、大きな病院はそういうことができないので、そういう点は残念だが、仕方がない」と閉院を惜しみます。
大窪天三幸院長:
「外科などの手術をするドクターが少なくなってしまって、地方には行きたくないドクターも多い。五城目町には元々4軒の内科の医者がいたが、5年前に小児科の先生が亡くなって、私が閉院すると4軒のうち2軒がなくなる。行政に応援してもらわないと大変」
いざという時に私たちの健康を守る地域の医療機関。人口減少や人手不足によって維持が危ぶまれている今、これ以上数を減らさないために早急な対応が求められます。
06月04日(木)18:30