秋田県潟上市でオリジナルの照明ブランドを立ち上げた男性がいます。全国で一番日照時間が少ない古里の秋田に「明かりを楽しむ文化」を根付かせようと取り組む男性の思いを紹介します。
部屋を照らすやわらかな光。眺めているだけで心が安らぎます。これらの照明器具は1人の男性によって作られました。
潟上市大久保に工房と店を構える進藤電気設計。オリジナル照明器具の設計から販売までを手がけるのが進藤正彦さん(45)です。
潟上市で生まれ育った進藤さんは、筑波大学大学院を卒業後、大手電機メーカーに就職し、製品設計のエンジニアを経験しました。会社勤めと並行して照明器具の製作を始め、2010年に独立。2014年に古里に拠点を構えました。
電気を使ったものづくりに興味を持ったきっかけは、大学時代に打ち込んだロボットの製作でした。
進藤電気設計・進藤正彦さん:
「大学1年のときにコンテストに出したロボットが全く動かなかった。マイコンのプログラムでこうすればセンサーからの信号を受け取ることができるとか、こうやったらもっとこうなるを積み重ねていくと、動くロボットができる。素材として電気が一番不思議だった」
電気でものが動く不思議に魅了された進藤さんは、これまでにない照明器具を提案したいと、オリジナル照明ブランド・twodo(トゥードゥー)を立ち上げました。
その中の一つ、CALM(カーム)は充電電池を内蔵し、1回の充電で1カ月以上使える常夜灯です。デザインや機能性が高く評価され、2015年度のグッドデザイン賞を受賞しました。この商品は、進藤さん自身の体験をヒントに製作されました。
進藤電気設計・進藤正彦さん:
「住んでいたアパートの階段になにも電気がなくて、1個でも小さいなにか明かりがあればいいなと思った。そのとき東日本大震災があって、それまでの常夜灯はコンセントに差すタイプだった。停電しても消えないもので、ずっと使える安心感がほしいと思った」
購入者の声を形にしたユニークな商品もあります。Light Base(ライトベース)と名付けた照明は、上に乗せたものを光で彩る光源器具で、お気に入りのものを季節や気分に応じて乗せ換えて楽しむことができます。光源部分は熱を持たないので、熱に弱い素材も飾ることが可能です。
進藤電気設計・進藤正彦さん:
「商品を購入した客が、亡くなった父の写真を飾っている所に一緒にLight Baseを置いて、その上に思い出の品を乗せて飾ったと聞いた。『父が手を振ってくれているように感じ、見ているだけで心が癒やされる』という声があった」
多彩な照明器具で人々に新たな体験を提案する進藤さんは「明かりが1個付くとなぜか人は安心する、ハッピーになれる。秋田は日照時間が全国で一番少ない。そういう地域こそ、明かりを楽しむ文化が根差せば良いのではないかと思う」と語ります。
これからも進藤さんは、暮らしを彩る暖かい明かりを潟上市から灯し続けます。
進藤電気設計は、2階に工房、1階にショップを併設しています。店内では修理や点検にも随時対応し、商品はオンラインストアでの販売も行っています。
04月25日(金)19:00