秋田県由利本荘市の地域おこし協力隊として活動しながら、民泊の管理人をしている女性がいます。女性は東京出身で、3年前に由利本荘市に移住してきました。移住のきっかけや現在の取り組みなどを紹介します。
由利本荘市の中心部に建つ白い壁の建物。2024年4月にオープンした民泊SUBAKO(すばこ)です。
この施設の管理人を務めているのは、工藤明日香さん(42)。東京都府中市出身の工藤さんは、母親が由利本荘市出身だったことから、幼い頃から何度も秋田に足を運んでいました。
3年前に12年間勤めたインテリア販売の仕事を辞めた工藤さんは、大好きな自然が多い環境を求めて、幼い頃から知っている秋田への移住を考えます。
最初はお試しで1年間、由利本荘市鳥海町にある親戚の家で暮らし、農作業を手伝いました。
工藤さんは「自然が豊かなところでいつか暮らしたいという思いがあって、それっていつだろうと考えたら、少しでも若いほうがいいのかなと思った。じゃあちょっと移住を考えてみようと思った。東京にいても四季はあるけど、四季が違って美しいというのは、秋田に来てからこういうことなんだと実感した」と話します。
秋田の豊かな自然に改めて魅了され、本格的に移住を決意した工藤さん。2022年に移住すると、すぐに由利本荘市の地域おこし協力隊に所属しました。
地域おこし協力隊の隊員として活動する傍ら、各市町村の隊員同士のつながりで知り合った大館市のNPO法人から「由利本荘市内の空き店舗を民泊にしたい」という話を受け、改装から携わってきました。
民泊SUBAKOは、1日1グループ4人まで受け入れ、工藤さんの丁寧な管理もあって、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
工藤さんは「半分くらいは外国の人が多い。日本人もいる。どこかから来てどこかに行く途中という感じで、日本一周しているという人もたまにいる」と教えてくれました。
1階はラウンジを兼ねたコミュニティースペースになっていて、イベントやミーティングなどさまざまな用途に使えます。
「SUBAKO」という名前とロゴは、鳥海山を飛ぶ鳥をイメージして工藤さんが考えました。
「SUBAKOなので鳥が巣立つみたいなイメージもあって、人が来て滞在して出ていく場所。自分が何かを始める一歩になる場所だったり、ふらっと立ち寄ってくれる場所になったらいいなと思う」と話す工藤さん。
現在は民泊の管理人をしながら、地域おこし協力隊として「ナリワイプロジェクト」という活動に携わっています。好きなことを生かせる自分らしい仕事=生業(なりわい)で地域に貢献したいという人を集めて、どんな仕事なら地域貢献を実現できるかをみんなで考える取り組みです。工藤さんは、説明会や講座を開いて参加者を支援しています。
自身も移住してから“なりわい”を見つけました。市内の木工職人から木の切れ端をもらい、アクセサリーを作ることです。組子細工や箸などを作るときに生じる余った木材を利用していて、環境にも優しい作品です。市内のイベントなどで販売しています。
秋田で充実した暮らしを送る工藤さんですが、地域おこし協力隊の任期は2025年3月で終わってしまいます。
任期を終えても由利本荘市に住み続けたいと話す工藤さんに今の思いを聞くと、「私なんかが作ったものを売って販売することはできないと思っていた。そういうできないと思っていたことに、誰かの一押しがあってチャレンジできた。そういうチャレンジできる人が増える町になったらいいと思う」という答えが返ってきました。
巣箱から飛び立つ鳥を見守るように、工藤さんはこれからも地域に住む人・訪れる人を見守っていきたいと願っています。
01月17日(金)22:00