筆などの道具は使わず、指で絵を描く女性アーティストが秋田県大館市にいます。一番気持ちが込められるという“手指”を使い、幸せを象徴するモチーフをカラフルに描き出すアーティストにスポットを当てます。

大館市のシンボル鳳凰山の大文字に…猫や女の子が色鮮やかに描かれている作品。

これらは筆などの道具ではなく、指を使って描いた「指描きアート」です。

作品を手掛けたのは大館市の畠澤陽子さん（27）。3～4歳のころから絵を描き始めたという畠澤さんは「父がすごく絵が上手で、写真みたいな絵を描くのが上手。そのスケッチブックを見て、まねして描いたりしていた」と話します。

畠澤さんは市内の高校を卒業後、「ものづくりに関わりたい」と地元の伝統工芸品『曲げわっぱ』を製造する会社に就職しました。

ところが、ものづくりに集中したいと思う一方で、会社が求める理想とのギャップに悩まされ、畠澤さんは次第に体調を崩します。

やがて休職を余儀なくされた畠澤さんでしたが、この期間に幼なじみからある依頼を受けたことで転機が訪れました。

「そういえば絵が上手だったよね。最近仕事がうまくいかず、つらいことがあるんだけど、元気あるものを描いてくれない？」と幼なじみに声をかけられ、描いてみようと思った畠澤さん。

完成した絵を渡したときにとても喜び「いつも玄関に置いて見てから仕事行くけど、頑張ろうって思える」と言ってくれた幼なじみの言葉で、「ああ私やっぱりこれかもしれない」と思い、画家としての活動がスタートしたといいます。

会社を退職して約3年、畠澤さんは次々と作品を生み出しています。

指描きアートを始めた理由については「描いているときの気持ちとか100％入り込むようにするには手が一番ぴったり、しっくりくる」と教えてくれました。

“見た人が幸せになるように”と描くものは幸せを象徴する動物などが多く、鮮やかな色合いが特徴です。

また、絵をよく見ると、ぐるぐると丸い模様に表面はでこぼこ。これにはある思いが込められています。

畠澤陽子さん：
「いろんなでこぼこを経験している人はいっぱいいるなと思って。私も他の人よりは経験していないかもしれないけど、つらいこととか。それを下地で表して、だけどその上には“ちゃんと幸せが来ると思ってほしい”という思いで、幸せな絵をその上に描いている」

さらに活動の場は海外に広がります。

自身の作品や創作の様子をSNSに投稿したところ、美術関係者から声がかかり、2024年秋にフランス・パリで開かれたアートフェアに出展することになったのです。世界30カ国のアーティストが参加し、畠澤さんの創作意欲も高まりました。

現地の反応について畠澤さんは「日本人の中で一番インパクトあるよねと言われたりした。すごい刺激物がいっぱい、いい意味で、何もかもが」と話してくれました。

地元での活動も忘れません。大館市を中心に個展や制作の様子を披露するイベントを開催し、オーダー作品の依頼も受け付けています。

「絵を描くことは生きること」と話す畠澤さん。つらい思いをしている人に自分の絵を見てもらい、明るい気持ちを取り戻してほしいと願っています。

畠澤陽子さん：
「いろんなコンプレックスとか、つらいこととか経験して乗り越えてきている。それでもつらくても、嫌だと思うけれども『絶対に幸せになれる』と信じてほしい。そういうことをテーマに絵を描いているから、そういう人の心が輝くようになってほしい」

でこぼことカラフルな作品からさらにどんな世界が広がるのか。畠澤さんの今後の活動に注目です。

04月02日(水)19:00