秋田県発注の公共工事で2つの業者に便宜を図り、見返りに現金を受け取ったとして収賄の罪に問われている元県職員の男の判決公判が30日開かれ、秋田地方裁判所は懲役2年6カ月、執行猶予4年、追徴金250万円の有罪判決を言い渡しました。

判決を受けたのは、元県秋田地域振興局建設部保全・環境課の副主幹・三浦学被告（49）です。

判決によりますと三浦被告は、県発注の道路維持管理業務で、横手市の土木建築会社「クラフト」と、男鹿市の林業会社「目黒林業」が再委託先に選ばれるように便宜を図りました。その見返りに、それぞれの企業の役員だった2人から現金250万円を受け取った収賄の罪に問われていました。

秋田地方裁判所で開かれた判決公判で、岡田龍太郎裁判官は「被告は以前から贈賄側による飲食などの接待を受ける傍ら、職務権限を利用して贈賄側に便宜を図るなど不適切な関係にあった」と指摘しました。

一方で「反省の態度を示し懲戒免職となっている」などと述べ、三浦被告に懲役2年6カ月、執行猶予4年、追徴金250万円の有罪判決を言い渡しました。

スーツ姿で現れた三浦被告は、判決文を読み上げる裁判官にしっかりと視線を向け、落ち着いた様子で聞いていました。

〈なぜ事件は起きたのか〉
判決を受け、三浦被告が収賄の罪に問われた2件の贈収賄事件がなぜ起きたのか。そして二度と汚職が起きないようにするには何が必要なのかを考えます。まずは改めて事件を振り返ります。

事件が明るみになったのは2024年8月。三浦被告が収賄の疑いで、男鹿市の目黒林業の元社長が贈賄の疑いで逮捕・起訴されました。

三浦被告は2023年3月、県が共同企業体と契約した事業のうち、道路の木の伐採作業が目黒林業に再委託されるようあっせんし、現金150万円を受け取りました。

事件はこれだけでは終わりませんでした。

2024年10月、別の贈収賄事件が発覚。三浦被告は収賄の疑いで再逮捕され、横手市の土木建築会社クラフトの元役員・小松谷行義被告（51）が贈賄の疑いで逮捕・起訴されました。

クラフトは、2023年7月の記録的大雨の際に冠水した、秋田市の秋田中央道路トンネルの復旧作業を請け負いました。その裏には、三浦被告が便宜を図り、見返りとして金を受け取っていた事実がありました。

裁判や事件発覚後の県の調査で、三浦被告と業者との強い結びつきが次々と明らかになり、県は再発防止に向けた対策を講じています。

裁判の中で、贈賄の罪に問われている小松谷被告は「これまでに3回、合わせて500万円を三浦被告に渡した」と明らかにしています。

県は、起訴内容を認めた三浦被告を懲戒免職処分としました。

県によりますと、三浦被告は、本来3人で対応すべき共同企業体との調整業務を1人で進めていました。また、建設部の職員603人を対象にした調査では、あっせん行為を見たり、聞いたりしたことがある職員はいなかったと報告されました。

こうしたことから、1人の職員が担当する業務を他の職員が知らないまま、独立して進められる環境にあったことが事件を引き起こした可能性があります。

〈再発防止への対策は〉
県は再発防止に向け、対策を検討しています。元請け、つまり県と契約をした企業や企業体が事業を再委託する際、県に「下請負届」を提出する必要がありましたが、今回のケースでは出されていませんでした。今後は、元請け業者に下請負届の提出を義務付けます。

また、これまでは、提出された届けを県の担当職員が受け取るだけで終わっていましたが、今後は職員の上司を含めた複数人で確認するということです。

県は3月上旬までにコンプライアンスマニュアルを改訂し、業者との会食を避けることなどを盛り込みます。あっせん行為を生み出すような環境をつくり出さないよう、職員の意識改革を進めます。

県建設部の川辺透部長は「公務員倫理研修を行い、職員一人一人が自分事として捉えて意識を改革するように取り組んでいる。また、組織としても全体で改革していかなければならない。1対1のミーティングや面談でいろいろやっていきたい」と話しています。

裁判では、三浦被告が飲食接待を受けていたことが明らかになり、県職員のコンプライアンス意識に疑問符がつく形となりました。

また、今回の事件は大雨災害にも関連していて、災害時にはマンパワー不足から職員が1人で対応にあたっていたことが分かっています。

二度とこのような事態が起きないよう、県の今後の姿勢を注視していく必要があります。

01月30日(木)19:30